01結論:相続しない相続人の同意は原則不要
遺言書が有効で、誰が・どの財産を取得するかが明確であれば、基本的には遺言の内容が優先されます。相続しない相続人に、あらためて実印や印鑑証明書をもらう必要は、原則としてありません。
02なぜ同意は不要なのか
遺言は、亡くなった方(被相続人)の最終意思を実現するための制度です。有効な遺言があれば、その内容に従って財産が承継されるため、他の相続人の合意によって内容を上書きする必要はありません。遺言執行者は「遺言の内容を実現する人」ですが、指定がなくても、下記のとおり手続きを進められる場合が多くあります。
03遺言の書き方で手続きが変わる(3パターン)
同じ「土地をAに渡す」でも、遺言の書き方によって必要な手続きが変わります。
① 「この土地を長男Aに相続させる」場合
「◯◯を相続させる」と書かれた遺言を、特定財産承継遺言といいます(民法1014条2項)。この場合、財産を受け取る相続人(長男A)は、他の相続人の同意・実印・印鑑証明書がなくても、原則として単独で相続登記を申請できます。遺言執行者がいなくても問題ありません。登記が完了すれば、Aが単独でその土地を売却することもできます。
② 「この土地を長男Aに遺贈する」場合
「遺贈する」と書かれている場合でも、Aが法定相続人であれば、2023年(令和5年)4月1日以降は、遺贈による所有権移転登記をAが単独で申請できるようになりました(不動産登記法63条3項)。したがって、他の相続人の同意は原則不要です。
③ 「土地を売却し、その代金をAに渡す」場合
これは換価型・清算型と呼ばれる遺言です。「誰が土地を売るのか」という執行行為が必要になるため、遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所で遺言執行者を選任してもらうのが一般的です。相続人全員の同意で代用するよりも、執行者を選任するほうが手続きが安全・確実です。
04検認は「同意をもらう手続き」ではない
法務局に保管していない自筆証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所の検認が必要です(民法1004条)。ただし、検認は遺言書の状態を確認・保存するための手続きであって、他の相続人から同意をもらうものではありません。相続人には検認期日が通知されますが、欠席しても検認は行われます。
なお、法務局の保管制度を利用していた遺言書は検認が不要です。保管制度の詳しい内容は、自筆証書遺言の書き方・記載方法のコラムで解説しています。
05遺留分には注意
相続しない相続人に遺留分(法定相続人に保障された最低限の取り分)がある場合でも、遺言をする際に事前の同意が必要になるわけではありません。
06まとめ
- 相続しない相続人の同意は原則不要(遺言が優先)
- 「相続させる」なら、受益相続人が単独で相続登記できる
- 相続人への「遺贈」も2023年から単独申請可/第三者への遺贈は執行者または相続人全員の協力が必要
- 換価・清算型は遺言執行者の選任が安全
- 検認は同意手続きではない/法務局保管なら検認不要
- 遺留分は事前同意不要だが、後日の遺留分侵害額請求は別問題
実際に同意や執行者選任が必要かどうかは、遺言書の該当部分(「相続させる」か「遺贈する」か等)を確認すれば、具体的に判定できます。判断に迷われたときは、お気軽にご相談ください。
遺言・相続の手続き、ご相談ください
遺言書の内容確認から、必要な手続きのご案内まで、丁寧にサポートします。初回相談は無料です。
086-238-8881※本記事は一般的な情報をまとめたものであり、個別の事案における法的助言ではありません。制度・法令は改正される場合があります。なお、不動産の登記申請の代理は司法書士、家庭裁判所への申立てや遺留分をめぐる紛争の代理は弁護士の業務です。当事務所は遺言書の作成サポートを行い、これらが必要な場合は提携の専門家と連携してご案内します。相続税に関するご相談は、代表が代表社員を務める税理士法人アストラストと連携して対応します。