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遺言書がないと財産は国のものになる?
法定相続人はどこまでの範囲になるのか

「配偶者も子どももいないので、亡くなった後は財産が国に取られてしまうのでは」——そんな心配をされる方がいます。実際は、亡くなった時点で直ちに国のものになるわけではありません。誰が相続人になるのか、法定相続人の範囲と、財産が国庫に帰属するまでの流れを、岡山の行政書士が整理します。

監修:三宅晴久行政書士事務所(岡山市)/2026年7月現在の制度に基づく解説

01遺言書がない場合は法定相続人が引き継ぐ

遺言書があれば、原則としてその内容に従って財産を引き継ぎます。遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続人が相続人となり、相続人全員の遺産分割協議で分け方を決めます。法定相続人には一定の順位があり、親族なら誰でも相続人になるわけではありません。

結論法定相続人がおらず遺言書もない場合、最終的に残った財産が国庫に帰属することがあります。ただし亡くなった時点で直ちに国のものになるわけではなく、相続人の調査・債務の支払い・特別縁故者への財産分与などを経たうえでの話です。

02法定相続人の順位と範囲

法律上の配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人です。配偶者以外は、次の順位で相続人になります。先の順位の人が1人でもいれば、後の順位の人は相続人になりません。

常に相続人
配偶者※法律上の配偶者。子・父母・兄弟姉妹などと共同で相続人になります。
第1順位直系卑属
ひ孫先の代が亡くなっていれば、下の代が代わって相続(代襲相続)。
第2順位直系尊属
父母祖父母父母のうち1人でも存命なら、祖父母は相続人になりません。
第3順位
兄弟姉妹甥・姪兄弟姉妹の代襲は甥・姪まで(一代限り)。

図:法定相続人の範囲(家系図)

祖父母 父 母 被相続人 ひ孫 配偶者 常に相続人 兄弟姉妹 甥・姪 甥姪の子 おじ・おば いとこ
被相続人 常に相続人(配偶者) 法定相続人になる範囲 対象外

※おじ・おば、いとこ、甥姪の子、内縁の配偶者などは原則として法定相続人になりません。実際の相続人は戸籍で確定します。

例えば子が1人でもいれば、父母や兄弟姉妹は相続人になりません。

03第1〜第3順位の詳しい範囲

第1順位:子・孫・ひ孫

第1順位は亡くなった人のです。子が先に亡くなっていれば孫が、孫も先に亡くなっていればひ孫が代わりに相続します(代襲相続)。例えば「長男は死亡・その子が2人・次男は存命」なら、次男に加えて長男の子2人も代襲相続人となり、父母や兄弟姉妹は相続人になりません。

第2順位:父母・祖父母(直系尊属)

第1順位がいない場合、父母などの直系尊属が相続人です。父母が2人とも亡くなっていれば祖父母が相続人になることがありますが、父母のうち1人でも存命なら祖父母は相続人になりません。

第3順位:兄弟姉妹・甥・姪

第1・第2順位がいない場合、兄弟姉妹が相続人です。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば甥・姪が代襲しますが、代襲は甥・姪まで(一代限り)。甥・姪の子には引き継がれません。

原則、法定相続人にならない人
  • いとこ/おじ・おば
  • 甥・姪の子
  • 子どもの配偶者/兄弟姉妹の配偶者
  • 内縁の夫・妻
  • 友人や知人
長年親しくしていた人や介護をしてくれた人でも、それだけで法定相続人になるわけではありません。

04法定相続分の例

配偶者と誰が相続人になるかで、法定相続分(目安の割合)が変わります(民法900条)。

相続人の組み合わせ配偶者配偶者以外
配偶者+子1/2子 合計 1/2
配偶者+父母(直系尊属)2/3父母 合計 1/3
配偶者+兄弟姉妹3/4兄弟姉妹 合計 1/4
配偶者のみすべて(全額)

※同順位が複数いる場合は、その人数で等分するのが原則です(例:子2人なら 1/2 を2等分=各1/4)。

05子どものいない夫婦は特に注意

子のいない夫婦では、「残された配偶者がすべて相続する」と思われがちですが、そうとは限りません。亡くなった人の父母や祖父母が存命ならその直系尊属と、直系尊属もいなければ兄弟姉妹(先に亡くなっていれば甥・姪)が、配偶者と共同で相続人になります。

自宅の相続でトラブルになりやすい配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合、法定相続分は配偶者3/4・兄弟姉妹(合計)1/4。自宅が主な財産だと、配偶者が自宅を取得するために兄弟姉妹・甥姪との遺産分割協議が必要になることがあります。

ただし兄弟姉妹には遺留分がありません。そのため「すべての財産を配偶者に相続させる」という有効な遺言書を作っておけば、原則として兄弟姉妹から遺留分侵害額を請求されることはありません(自筆証書遺言の書き方もご参照ください)。

06相続放棄をすると次の順位へ移る

法定相続人がいても、その人が相続放棄をすることがあります。例えば子ども全員が放棄すると、次に父母などの直系尊属へ、直系尊属も全員放棄すれば兄弟姉妹・甥姪へと、相続権が移ります。第1順位が全員放棄しても、すぐに相続人がいなくなるわけではありません。第1〜第3順位まで誰もいない、または全員が放棄した場合に、はじめて「相続人不存在」の手続へ進みます。

07相続人がいない場合はどうなるか

相続人がいない場合、家庭裁判所は利害関係人や検察官の申立てにより相続財産清算人を選任します。清算人は相続人を捜索し、債権の回収や、借入金・未払金・税金などの債務の支払いを行います。

相続財産清算人の選任家庭裁判所が相続財産清算人を選任します。
相続人の捜索・公告相続人を捜索するための公告を行います。
債権者・受遺者への支払い債権者や受遺者に対する支払いを行います。
特別縁故者への財産分与特別な縁故があった人からの申立てを受け、家庭裁判所が分与を検討します。
残った財産を国庫へ引き継ぐ以上を経て、最後に残った財産が国庫に帰属します。
ポイント国庫に帰属するのは、手続を経たうえで「最後に残った財産」です。すべての財産がそのまま国のものになるわけではありません。

特別縁故者なら財産を受け取れることがある

法定相続人でなくても、亡くなった人と特別な関係にあった人(特別縁故者)は、財産の全部または一部を受け取れる可能性があります。想定されるのは「生計を同じくしていた人」「療養看護に努めた人」などです。ただし自動ではなく、所定の期間内に家庭裁判所へ申立て、分与を認めてもらう必要があります。財産分与を受けて申告義務が生じた場合、原則としてその事実を知った日の翌日から10か月以内に相続税の申告が必要です。

08国に渡したくない場合は遺言書を作成する

法定相続人がいない方が財産を国庫に帰属させたくない場合、また法定相続人以外に財産を残したい場合は、遺言書の作成が必要です。遺言があれば、法定相続人でない人や団体に財産を遺贈できます。

遺言書作成のポイント
  • 受遺者を具体的に特定する(氏名・住所・生年月日など)
  • どの財産をどのように渡すかを明確に記載する
  • 複雑な手続が必要な場合は遺言執行者を指定する(遺言執行者について

遺言書の作成を特に検討したい人

特に法定相続人がいない方は、遺言書がなければ、友人・内縁の配偶者・介護者・遠い親族などへ当然に財産が渡ることはありません。生前に受取人と手続をする人を明確にしておくことが大切です。

09まとめ

遺言書は、単に国庫帰属を避けるためだけのものではありません。自分が築いた財産を、自分の意思に沿って大切な人や社会へ引き継ぐための、大切な手段です。

相続人の範囲・遺言のご相談

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※本記事は2026年7月現在の法令・制度に基づく一般的な解説であり、個別の事案における法的助言ではありません。当事務所は戸籍収集や遺言書の作成サポートを行い、不動産の登記は司法書士相続人不存在・特別縁故者の家庭裁判所への申立てや遺留分をめぐる紛争は弁護士が必要な場合は、提携の専門家と連携してご案内します。相続税や遺贈に伴う税負担については、代表が代表社員を務める税理士法人アストラストと連携して対応します。

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