01まず優先すべき3つのこと
相続財産の分け方を急いで決める必要はありません。まず優先すべきは次の3つです。
- 死亡届と火葬の手続きを進める
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人と財産・借金の状況を調べる
027日以内:死亡届と埋火葬の手続き
まず医師から死亡診断書(または死体検案書)を受け取り、親族への連絡、葬儀社・火葬場の手配を進めます。死亡届の用紙は、右側が死亡診断書、左側が遺族などが記載する死亡届になっています。死亡保険金や年金の手続きで写しを求められることがあるため、役所へ提出する前にコピーを取っておくとよいでしょう。
提出時には、あわせて埋火葬許可の申請を行います。岡山市では、死亡届と死体埋火葬許可申請書を提出すると埋火葬許可証が交付されます。火葬・納骨で必要になるため、紛失しないよう保管しましょう。死亡届は、亡くなった人の死亡地・本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場へ提出できます。
03できるだけ早く:遺言書の有無を確認する
遺言書には、財産の取得者・遺言執行者・葬儀や供養の希望などが記載されている可能性があります。確認しないまま相続人だけで分け方を決めると、後から遺言書が見つかりやり直しになりかねません。次のような場所を確認します。
- 自宅の金庫・机・書棚、重要書類のファイル
- 銀行の貸金庫
- 公証役場、法務局の遺言書保管所
- 弁護士・司法書士・行政書士・税理士などの専門家
※公正証書遺言と法務局に保管された自筆証書遺言は、検認は不要です(詳しくは自筆証書遺言書保管制度のコラム)。
04早めに:健康保険・年金の手続き
葬儀後は、亡くなった人が加入していた健康保険・年金の手続きを確認します。会社員か自営業者か、後期高齢者医療制度に加入していたかなどで内容が異なります。
健康保険の資格確認書などを返却する
会社の健康保険に加入していた場合は勤務先へ連絡し、有効期限内の資格確認書などを返却します。協会けんぽでは、一定の要件を満たす人に埋葬料(被保険者が亡くなった場合は原則5万円)または埋葬費が支給されます。国民健康保険・後期高齢者医療制度では、自治体から葬祭費が支給されることがあります(金額・書類は自治体により異なるため、住所地の市区町村へ確認)。
年金の死亡手続きと未支給年金の請求
年金を受給していた場合、死亡手続きと未支給年金の請求が必要になることがあります。マイナンバーが収録されていれば、年金受給権者死亡届は原則省略できます。亡くなった月分までで未払いの年金がある場合は、生計を同じくしていた一定の遺族が未支給年金を請求できます。
05相続人を確定するために戸籍を集める
相続手続きには、まず誰が法定相続人かを確定する必要があります。家族が把握していなかった前婚の子や認知した子がいることもあり、現在の戸籍だけで判断するのは危険です。一般的には、亡くなった人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を取得して確認します。相続人確定後は、各相続人の現在戸籍や印鑑証明書なども必要になることがあります。転籍・婚姻・離婚・養子縁組などを追って、複数の市区町村へ請求しなければならないこともあります。(誰が相続人になるかは法定相続人の範囲のコラムをご覧ください)
06財産だけでなく借金も調査する
相続では、プラスの財産だけでなく、借入金や未払金などのマイナスの財産も引き継ぐ可能性があります。通帳・郵便物・固定資産税の納税通知書・証券会社の取引報告書・借入金の返済予定表・確定申告書などを確認すると把握しやすくなります。
主な例
預貯金/土地・建物/株式・投資信託/生命保険金/自動車/貸付金/事業用財産/ゴルフ会員権/貴金属・美術品 など
主な例
借入金/住宅ローン/クレジットの未払金/未払医療費/未払税金/連帯保証債務/事業上の買掛金・未払金 など
不動産は、自宅だけでなく、農地・山林・共有持分・先代名義の土地などが残っていることもあります。
073か月以内:相続放棄を検討する場合
借金が多い場合や、財産と債務のどちらが多いか分からない場合は、相続放棄・限定承認を検討します。相続放棄は、財産も債務も一切引き継がないための手続きで、原則として自分のために相続が開始したことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述します。3か月以内に調査しても判断できない場合は、家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てられることがあります。期限を過ぎてから慌てるのではなく、早めの対応が重要です。
084か月・10か月:準確定申告と相続税
準確定申告は原則4か月以内
亡くなった人に確定申告義務がある場合、相続人が準確定申告を行います。その年の1月1日から死亡日までの所得と税額を計算し、期限は原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。個人事業・不動産賃貸収入・土地や株式の売却・多額の医療費・一定額を超える年金収入などがあった方は、申告が必要か確認しましょう(全員に義務があるわけではありません)。
相続税の申告・納税は原則10か月以内
相続財産が相続税の基礎控除額を超える場合などは、相続税の申告が必要です。期限は原則として亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内。10か月あるように見えますが、相続人の確定・財産調査・土地や非上場株式の評価・遺産分割協議・申告書作成・納税資金の準備など、多くの作業が必要です。遺産分割が終わっていなくても、申告期限は原則延長されません。相続税がかかる可能性がある場合は、早い段階で税額と納税資金を確認することが重要です。
09主な期限の一覧
| 期限の目安 | 主な手続き |
|---|---|
| できるだけ早く | 死亡診断書の受領、葬儀の手配、遺言書の確認 |
| 死亡を知った日から7日以内 | 死亡届、埋火葬許可の申請 |
| 早めに確認 | 健康保険、年金、未支給年金、生命保険 |
| 3か月以内 | 相続放棄・限定承認 |
| 4か月以内 | 準確定申告・納税 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納税 |
| 原則3年以内 | 不動産の相続登記 |
※期限の起算日は、単純に「死亡日から」とは限りません。死亡を知った日、自己のために相続が開始したことを知った日など、手続きごとに異なります。長く疎遠だった親族の死亡を後から知った場合などは、起算日の判断が重要です。
10直後に避けたいこと・進める順番
家族が亡くなった直後は、次のことを急がないようにしましょう。
- 遺言書を確認せずに財産を分ける(後で見つかるとやり直しに)
- 借金を調べずに相続すると決める(保証債務も引き継ぐ可能性)
- 一部の相続人だけで遺産分割を決める(原則、全員の合意が必要)
- 亡くなった人の通帳・印鑑を自由に使う(トラブル・税務確認の原因に)
- 重要書類や郵便物を処分する(財産調査に必要)
最初から財産を完全に把握し、遺産分割まで決める必要はありません。次の順番で進めることが大切です。
何から始めればよいか分からない場合は、まず全体像と期限を整理してもらうだけでも負担を大きく減らせます。
11まとめ
家族が亡くなったとき、最初にすることは「財産を分けること」ではありません。死亡届と火葬の手続きを行い、遺言書の有無を確認したうえで、相続人・財産・借金を調査することが先です。特に重要な期限は次の3つです。
- 相続放棄:原則3か月以内
- 準確定申告:原則4か月以内
- 相続税申告:原則10か月以内
期限を過ぎると、利用できる選択肢や特例が限られる可能性があります。当事務所では、相続手続きの全体整理、戸籍の収集、相続人調査、遺産分割協議書の作成、預貯金手続きなどをサポートします。
※本記事は2026年7月現在の法令・制度に基づく一般的な解説であり、個別の事案における法的助言ではありません。個別の事情によって必要な手続きや期限の起算日が異なる場合があります。当事務所は戸籍収集や遺言書の作成サポート等を行い、相続税の申告は税理士法人アストラスト、不動産の相続登記は提携司法書士、相続放棄など家庭裁判所への手続きは提携の司法書士・弁護士と連携してご案内します。